(広い家よね)

 このやたらと広い屋敷。やっぱり冥界の姫って言うことはあると思う。正直、ちょっと羨ましい。

(この広さなら掃除するのも一苦労よね)

 その広い屋敷を音を立てないように奥に進んでいく。屋敷の中に今のところ人の気配を感じない。

(幽霊屋敷だから当然なのかしら?)

 ここに住むのは基本幽霊。だから、気配なんて無いのかもしれない。

 一つ一つ部屋を見ていく。けれど、何処も空。おかしい。

(一体何処で寝てるのよ)

 探す。探す。探す。見つからない。こういう時、広い屋敷は面倒くさい。

 諦めて帰ろうかな〜って、誘惑が出てきた時、強烈な匂いが鼻に漂ってきた。

(うわ、何これ? 酒臭い)

 なんとも言えない。アルコールの匂い。奥の大広間。前の花見の時に使ったあの部屋から臭ってくる。

(まさか……)

 匂いの元、大広間。その襖をそっと開ける。そして、そこに広がっていたのは予想以上の光景。

(うわ〜)

 私の予想は幽々子と妖夢あたりが酔いつぶれてるんだろうな〜ぐらいだったけど、実際はそれ以上。大広間中に散らかる酒瓶。大きなコタツの上に散乱する空の皿。そして、そのコタツで寝ている駄目な連中。

 幽々子と妖夢は解かる。けど、スキマ妖怪――八雲紫とその式神の八雲藍。さらにその式神の橙。そしてよく仕事をサボる死神の小野塚小町。その上司、冥界の閻魔の1人、四季映姫ヤマザナドゥ――小町曰く通称山田。と、冥界の知り合いが転がってる。

(そういえば、咲夜は今日のサンタの仕事を妖夢にも頼んだけど、用事があるからって断られたって言ってたわね)

 用事。つまり、この宴会がそうなんだろう。けど、本当にここは酒臭い。一体どれくらいの酒をここで飲んだんだろう。

(特に紫は飲むからなぁ)

 だらしなく口からよだれ垂らして寝てるスキマ妖怪。確かこいつも幻想郷の最強候補だったはずなんだけど、それは気のせいだったかも。

(まあ、いいか。ちょうどこれだけ集まってるし、プレゼント置いていこう)

 プレゼントを1つ1つ、それぞれの枕元に置いていく。

 途中、

「……待ちなさい〜焼き鳥〜」とか、

「幽々子様、拾い食いは駄目です〜」とか、

「誰が年増よ〜」とか、

「油揚げ〜」とか、

「煮干〜」とか、

「仕事はサボるためのもんだぜ〜」とか、

「山田言うな〜」とか、

 色々寝言が聞こえた。

(それぞれ色々あるのね)

 そういうことにしておく。さ、プレゼントも置いたし帰ろう。

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