(次で最後だぜ)

 紅魔館。悪魔の住む館。いつも夜はパーティ会場。私もたまに参加する。けど、今日は不思議なことに館は寝静まっている。

(やっぱりクリスマスだからか?)

 皆、このイベントのために今夜は寝てるのか。そう考えると凄いぜ。いつも騒がしいこの館が静だってだけで、まるで別の場所みたいだ。ただ、別の場所のように見えてもやっぱり紅魔館には違いなく、やたらと広いせいで部屋を回るのが大変だった。まあ、その分色々珍しいものは見れたけど。

 門番の部屋は本当に『中国』だったし、レミリアとかフランとか吸血鬼は棺で寝るもんだと思ってたら、普通にベッドで寝てるし。これは新発見だ。

(普段見れないものを見れるのは面白いな)

 と、気づけば最後の部屋の前か。ここはよく来る場所だ。紅魔館の図書館。大量の本がある場所。そして、その主――パチュリー・ノーレッジの部屋でもある。

(あいつは寝てるんだろうな?)

 あいつは何時行っても、本読んでるからな。もしかしたら今日もクリスマスとか関係なく本読んでるかもしれない。

(その時は直接渡すか)

 サンタの正体がばれるのは極力避けてくれとは言われてる。けど、この場合は仕方がない。パチュリー次第だ。

(さ、入るぜ)

中に入る。相変わらずの本の山。今日も何冊か借りて行きたいけど……。

(う〜ん、本棚に警報機付きだからなぁ。今日は無理か)

 この警報機がなって起きてこられたんじゃ、流石に不味い。仕方がないので本を借りるのは次回にする。

(さて、パチュリーのベッドはと……)

 お、見つけた。図書館の奥。そこに居住スペースみたいなのがある。そして、その奥に割と豪華なベッドがある。中ではパチュリーがいつもの格好のまま寝てる。やっぱりあれはパジャマも兼ねてるらしい。

(こいつ本当にここから出てないんだな……)

 さすが引きこもりの紫もやし。私の記憶が確かなら、前に外歩いてるの見たのは、萃香の時だ。結構前になる。

(たまには健康的なことをしたほうが良いと思うぜ)

 さて、とっととプレゼントを置くか。

 置き場を探す。と、また、枕元、その近くの大きな靴下の所に『サンタへ』と書かれた手紙がある。

(こいつは何を書いてるんだ?)

 折りたたまれた手紙を開く。何々……。

『魔理沙が持っていった本が、一刻も早く返ってきますように パチュリー』

(う〜ん、耳が痛い。いや、この場合は目が痛いぜ)

 結構借りてるからな。今度少し返しに来るか。覚えてたらだけど。

(けど、この手紙変だろ。これじゃ七夕だ。う〜ん、こいつも間違ってるぜ)

 さて、少しばかり良心が痛むんで、プレゼントを靴下に入れて撤退するか。

(じゃあな、パチュリー)

 部屋を出ようとした時、後ろから『う〜、パチュ〜』とか、聞こえた気もするが、多分あれは空耳か寝言だろう。なので気にしない。

さ、帰るぜ。かえってディナーだ。

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