12月24日。夕刻。夕刻といってもこの季節。外は真っ暗。そして、今日は一段と冷える。うう、行きたくないな〜。

けど、もう3人とも来てるし、さすがに今から断るわけにもいかない。

(少し早まったかも……)

 仕方がない。それじゃ、これ以上冷え込む前に始めてしまおう。

「それで咲夜、今日はどうするの?」

「手順はこうです。私達4人がそれぞれのルートどおりにプレゼントを配って周ってお終い。ただそれだけです」

「えらく簡単だな? 楽な仕事だぜ」

 魔理沙の言うとおり聞くだけなら簡単そうだけど、

「何言ってるのよ。幻想郷中を周るのよ? かなり時間かかるわよ」

 アリスの方が正解。幻想郷中を周るのだから楽なはずはない。

「ええ、ですから4人でやるのですわ」

「あ、そっか」

 魔理沙はあっさりと納得。では、早速、プレゼントを配りに行かないと。何しろ4人で幻想郷を周るのだから。早くしないと次の日の朝日が昇ってしまうわ。

「それじゃ、さっさっと行きましょう」

「まだ駄目ですよ」

「何で?」

「クリスマスのプレゼントは皆が寝静まった時間に配るものなのです」

「面倒ね」

「伝統よ」

 一言で答えてくれるアリス。伝統か。それじゃ仕方がないか。けど、それじゃ、集合時間は早すぎる気がする。

「ねえ、集合時間、早すぎるんじゃない? もう少し後からでもいいでしょうに」

「準備のためですわ」

「準備? プレゼントは用意してあるだろ?」

 魔理沙の指差す先には4つの白い大きな袋が置かれてる。咲夜が持ってきたプレゼントだ。

「ええ、プレゼントは用意してあります。あとは4人のルートをそれぞれ確認しないと。一応ルートを記した地図は用意してますけど、確認したほうが良いでしょう?」

 確かに。一晩で幻想郷を周るのだからそれぐらいの確認はしておいた方がいいか。

「それと、もう1つ、あなた方にプレゼントがあります」

「プレゼント? 私達にも?」

「ええ、どうぞ受け取ってください」

 咲夜から配られる袋。それは私のも魔理沙のもアリスのも同じぐらいの大きさだ。

「袋の中身は服です。なので、今から着替えてください」

 防寒着かなんかかな? 早速着替えてみよう。

◆◇◆◇◆

「なんだか、恥ずかしいわ……」

 顔を赤らめるアリス。う〜ん、これは少し私も恥ずかしい。

「なんか赤と白って霊夢みたいだよな」

 色合いは巫女服と同じだけど、服の形も感じも全然違う。私が言うんだから間違いない。

「皆さんお似合いですよ。霊夢はあまり代わり映えがしないような気もしますけど」

「そりゃ色合いは似てるけど……って、咲夜もやっぱり着るのね」

「ええ、メイド服では寒いですから」

 咲夜はそう言うけど、この服は防寒着としては中途半端だ。上はともかく下はスカート。普段スカートを履かないから慣れない。おまけにスカートは短いし。

「で、結局、この服は何なんだ? 温かいには温かいけど、少し変だぜ? 色も霊夢みたいだしな」

「これはサンタクロースの服ね。多少違う気もするけど」

 アリスが言う多少は間違いなく、この短いスカートのことなんだろう。私もなんとなくだけど、そう思うし。

「ええ、アリス、あなたが言うとおりこれはサンタの服よ。それも女性用」

「サンタはお爺さんでしょう?」

「今は若い女性も居るそうです。香霖堂に置いてあった外の世界の本に書いてありました」

「……なんだか怪しい気がするわ」

 それは私も同感。これには怪しさを感じる。

「さて、4人のサンタが揃ったところでルートの確認をしますよ」

「やるからにきっちり行くぜ」

「これ本当に大丈夫なのかしら。少し不安だわ」

「それじゃ、新しいお祭りを始めましょうか」

 こうして私達4人の聖夜祭が始まった。

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