「色はいいわよ。それでクリスマスって何なの?」

「クリスマスというのは外の宗教のお祭りよ。その宗教の神の子が産まれた日を祝う日ね」

 さすがアリス。こういうことはよく知ってる。

「それと泥棒とどう関係あるの?」

「泥棒は関係ないですわ。クリスマスはキリスト教の聖夜祭。その聖夜12/24日に赤い服を着た老人、サンタクロースが子供達にプレゼントを配っていくお祭りです」

「え? それも間違いじゃないけど……」

「いいんです。今日の話に関係あるのはそこだけなんですから」

 なんだか、他にも色々あるみたいだけど、咲夜が言うにはサンタクロースって人が子供にプレゼントを配る日ってことでいいみたい。でもそれとこの集まりとの関係が解からない。まさかその真似事でもしろというのかしら。

 魔理沙は私と同じ疑問を直接声にする。

「? どういうことだ? 私達にそのサンタって爺さんの真似でもしろっていうのか?」

「ええ、そのとおり。それが今回の依頼よ」

 あっさり肯定される。なんというか変な話。

「まあ、依頼なら私はいいけど、報酬は出るんだろうな?」

「もちろん。クリスマスのスペシャルディナーのおまけもつけますわ。当然、費用はこちらもちです」

「それなら私もいいわ。その日は里で人形劇やった後は予定ないし」

 魔理沙もアリスも特に考えることも無く引き受ける。そして、咲夜は私にもその返事を求めてくる。

「あなたもいいでしょう? どうせいつも暇なんでしょう?」

「ちょっと待った」

「ん? 用事でもあるのか霊夢?」

 用事でもあるのかって、あんたはいつも何処に顔出してるつもりだ。

「あんた達、私の職業知ってる?」

「巫女」

「巫女」

「巫女」

 3人とも私の職業を知ってはいるみたい。ただ、理解までは出来てないみたいだけど。

「そう私はこの博麗神社の巫女よ? その私が他所の神様のお祭りなんて……」

 宗教的に考えてここはおかしい。なのに、

「いいじゃないか。どうせ暇だろ?」

 たった一言で『いいだろ』なんて言われても困る。確かに暇だけど。

「いいじゃない。人に迷惑かけることでもないし。神様も文句は言わないわよ」

「文句は言わないだろうけど……」

 気軽過ぎる。アリスにとっては宗教なんてそんなものか。まあ、私もそれで良いといえばいいけど。

「……解かったわよ。やるわ。ただし報酬ははずんでよね」

「決まりですね」

「ねえ、やるのはいいとして、なんでこんなこと考えたの?」

 面白そうとは思うけど、これはかなり手間のかかることだ。普通は思いつきだけで始めるとは思えない。となると、こういうことを考えるのは『暇でお金と権力持ってそうなの』になる。そして、それに当てはまりそうなのは、

「考えたのはお嬢様よ」

「やっぱり」

 咲夜の主。スカーレット・レミリア。確かに彼女ならこういう大きなイベントは好きだろう。けど……。

「……それっていいの?」

 仮にも吸血鬼が神様のお祝い事なんか企画していいのかしら。

「いいのよ。お嬢様はただ幻想郷に新しい文化を持ち込みたいのよ。最近、退屈してらっしゃるし。別にこの宗教自体には何の興味も無いわ」

「ふ〜ん。まあ、いいけど」

 宗教云々はいまさらか。レミリアはよくここにも遊びに来るし。

「それでは24の夕方にここに集合です。子供達に配るプレゼントは私が用意します。あ、それと霊夢」

「何?」

「当日も温かいもの用意して置いてくださいね」

「仕方ないわね〜」

 こうやって私達は新しい冬の祭りを起こすことになった。

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