×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

 序章 楽園求めて 始動

とある街の片隅にひっそりと立つボロアパート。その一室から物語りは始まる。その部屋の主は見るものが見れば、間違いなく『ダメ男』と呼ばれる部類の男だ。その男は部屋に明かりも付けず、万年床の布団に倒れこんでいた。まあ、倒れこんだと言っても、本当に倒れたわけではなく、ただ単に布団に入っただけなんだが。

 男は暗い部屋の中、1人呟く。

「金ほしいなぁー」

 その呟きはまあ、現代を生きる人間であれば、誰も考えることでもある。しかし、この男が口にするには少々、いや、かなり身勝手な台詞だ。

 この男、先程まで仲間達と夜の町をブラブラしていたのだが、財布が空になったため仲間達と別れ、1人アパートに戻ったのである。

 男は少し前までは近くの短期大学に通っていたのだが、いつの頃からか遊び癖がつき、ろくに講義にも出席しなくなり、ついには退学した。男の両親はこれに激怒し、男を家から追い出した。これには当然、「これまで、甘やかした自分達にも責任はある。だから、息子を世間に放りだし、息子が世間の荒波に揉まれることで、改心し成長して欲しい」という両親の切なる願いが込められていたのだが、当の息子であるこの男の遊び癖は抜けず、今も遊び歩いている。まさに親の苦労子知らずというやつだ。ちなみにそんな男の収入源はコンビニバイトと仲間達と行うかつあげの2つだった。

男は不安を抱いていた。今の生活は誰からも文句を言われない自由なものだ。そこには金に困るということ意外では不満は無い。しかし、男も本気の馬鹿ではない。こんな生活がいつまでも続けられるものではないことも解っている。そして、その事実が男を不安にさせ、その不安がさらに男の生活を無茶なものに追い込んでいた。

しかし、それもそろそろ限界だ。そろそろ両親に頭を下げ、この自由に終止符を打ちくだらない現代社会の歯車にならなければならない時がきたのである。このままではそれこそ宝くじにでも当たらない限り、間違いなく路頭に迷うことになる。

男はそこまで考えた後、「はぁ〜」と、大きなため息を零す。そして、

「自由に生きたいな……」

 と、あまりにも身勝手で、それでいて、心から渇望する望みを口にした。それが叶わぬ願いだとは解っている。この時代にそんな『自由』はない。だが、だからこそ、より心は渇望する。

 最近はこの身勝手な欲望を願いながら、床につくのが男のここ最近の決まりごとだ。無意識の内にも世界を呪いながら、男の1日はこれまで、終わりを告げてきた。しかし、今日その日は突然、そして必然に男の願いに答えるものがあった。

『じゃあ、叶えてあげるよ。父様……』

「!?」

男の願いを見透かした。甘く住んだ声。それが悲劇の始まりとなる。


                                                         
退魔日誌第一章第一節