「気持ち良い……」
古手神社の啓内。その丘。私は1人そこにいる。
パーティーで火照った身体には、冬のこの冷たい風と、目の前に広がる白銀の世界が心地良い。
「久々にあんなに騒いだな」
本当に楽しいパーティーだった。前原家貸切で行われたパーティー。圭ちゃんの両親が仕事で東京に行っているということで、遠慮なく皆して騒いだ。
皆で持ち寄った料理にケーキ。そして、ジュースと……一部のお酒(持ち込んだのは梨花ちゃん)。
そして、食事の後のゲーム大会。これまでの部活で培った知識と経験、そして技術。皆がその全てを駆使して戦った。まさに白熱の試合だった。
その後もカラオケして、ゲームして、料理食べて。そんなのを繰り返して……。それは本当に楽しい時間だった。
詩音が持ってきたエンジェルモート特製ケーキに感動する羽入。
それを見て『はぅ〜。お持ち帰り〜♪』と、瞳を輝かせるレナ。
悟史と詩音に甘える沙都子。
てっきり悟史にべったりかと思ったら、沙都子に姉の様に接する詩音。
沙都子と詩音の姿を優しい瞳で眺める梨花ちゃん。
圭ちゃんと共通の趣味で盛り上がる悟史。
そして皆の中心で笑う圭ちゃん。
楽しかった時間。けど、それももう終わっている。今頃はみんな圭ちゃん家の客間(一部は違うだろうけど)で寝てる頃だ。
祭りの後の静けさ。まさに今がそれだ。さっきまでの時間が楽しかった分、今は寂しい。
「楽しかったな……」
言葉になって零れる寂しさ。それに答える優しい声。
「ああ、楽しかったよな……」
「……圭ちゃん」
振り向けばそこには圭ちゃんがいた。
「来てくれたんだ……」
「ああ。来ないわけ無いだろう」
「ありがとう」
「それで話って何だ?」
始まった。私はこれからの時間に全力をかけて挑む。どんな結果になっても悔いを残さないように。
深呼吸して気持ちを落ち着ける。そして、何度もイメージ言葉を、イメージしたとおりに声にする。