「きゅ、急にどうしたのさ!?」
「いや、ここ最近、おまえがここでバイトしてるって話だったからな、様子を見に来たんだ」
「ふ、ふ〜ん。そう……」
遅いよ圭ちゃん。本当に遅い。けど、来てくれてありがとう。
私は感情が顔に出ないように必死に、平静を装う。
「本当はもっと早くここに来たかったんだけどな。俺も昨日まで忙しかったんでな」
「そういえばレナもそんなこと言ってたね。何をしてたんだい?」
「俺も魅音と同じだよ。バイト」
「バイト?」
「ああ。今日のパーティ用のプレゼントを買うためにな。ちょいと俺の懐は寂しかったからな。今日までバイトしてたんだ」
「そうだったんだ……」
なんだ。じゃあ、仕方が無いよね。私も同じ事を(私の場合は少し違うけど)してたんだからね。けど、本当にそれが解かってほっとする。私が圭ちゃんに嫌われたんじゃないって解かっただけで。どうやら、私、園崎魅音は自分でも知らないうちに恋する乙女ってのになってたらしい。
なんか、それに気付くと頭の中が混乱してくる。うわ、どうしよう、目の前に圭ちゃんがいるっていうのに。
そんな、私の混乱に気付かず(この場合は気づかれずにすんで良かったけど)に圭ちゃんは普通に、それこそ自然に聞いてくる。
「ところで魅音、今日は何時までなんだ?」
「え?」
急な問いかけの意味を理解できず、間抜けな声を上げてしまう。
「いや、だからバイト」
「ああ、バイトね。バイトは2時まで。あと1時間もすれば上がりだよ」
「そっか。んじゃ、少し、店の中で買い物でもしながら待つかな」
「待つって、もしかして私を?」
「? 他に誰もいないだろう? それとも、この後用事でもあるか?」
「ううん。用事は無いよ。待って。終わったら一緒に帰ろう!!」
「ああ。解かった」
やさしく微笑む圭ちゃん。うわ、どうしたんだろう。本当に今日の圭ちゃんはヤバイ。そんな風にやさしくされたら、私どうしたらいいのか解からなくなるって。
心臓がバクバクする。落ち着け。クールになれ園崎魅音。冷静に考えれば、今日はパーティーの後に圭ちゃんを呼び出して、こ、こ、告白するんだろう。今からこれでどうする。
顔に熱が篭る。ヤバイ。このままじゃ、何時まで平静を装えるかわからない。
熱暴走寸前の私。と、そのギリギリのところで圭ちゃんは売り場の方に眼をやり、
「それじゃ、俺少し向こうの方見てくるから」
と、スタスタと歩いていく。
「ふ〜う。助かった〜」
本当に助かった。正直、あのままだったらいつ暴走するか解からなかった。圭ちゃんが離れたところで急いで冷却だ。
手元の湯飲みにお茶を注ぎ、それで緊張を抑える。よし。もう、大丈夫。私はいつもの園崎魅音だ。
私がようやくクールダウンしたその頃、売り場の方から『う〜ん』という唸り声が聞こえる。今店にいる客は圭ちゃん1人。とりあえず様子を見に行くことにする。