「あんたは清純派じゃなくて変態でしょ」
「なっ!? へ、変態!? この私が変態!? お姉、いくら私が可愛くて羨ましいからって、そんなこと言って良いと思ってるんですか!? 世が世なら、井戸の奥底行きですよ!! 大体何を根拠に……」
いきり立つ詩音。こいつは本気で自覚が無いのだろうか? 仕方がないので聞いてきた『根拠』とやらを答えてやろう。
「根拠ならあるわよ」
「へ?」
「今日の朝、悟史が来てね。あんたのことで最近、悩んでるから相談に乗ってくれって言われてね」
「悟史君がお姉に? 私を差し置いて何で……。まさか?」
「そりゃ、あんたのことだからでしょう」
「私のこと……」
「そう。もう悟史が何を相談しに来たか解かるでしょ?」
「……悟史君」
ようやく気付いたらしい。さあ、我が妹よ、己の愚かさを反省し、真っ当な人間になるが良い。
「私が好きで告白したい気持ちは良くわかります。それで悩んでいたんですね。私は嬉しいです。けど、それならお姉に相談なんて無駄な時間は省いて私に直接『詩音好きだ』って言ってくれれば、その日は2人の愛の記念日になるのに」
「イヤン、イヤン」と恥ずかしがる詩音。けど、その顔はよだれを垂らし、欲望に忠実だ。とても清純派の乙女の顔には見えない。
「あ〜、詩音?」
「何です? 私は今、2人の薔薇色生活をシュミレート中なんですけど」
「いや、それは良いけど、その悟史が私に相談してきたのはあんたへの愛の告白じゃないよ」
「へ? それじゃ他には思いつきませんけど?」
キョトンとする詩音。うわ、こいつ本気で解かってね〜。つーか、間違いなく自分には間違いなど無いって思ってやがる。我が妹ながら何故、ここまで天上天下唯我独尊な性格なのか。
あまりの都合の良さに頭が痛くなるが、ここで見捨ててしまえば、後々私にも厄介ごとがきそうだ。なのでやさしく修正してやろう。
「あんた、いい性格してるよ。良い? 悟史はあんたが最近、コスプレしたり胸押し付けたりしてくるから、からかわれてるんじゃないかって、私に相談してきたのよ」
「そ、そんな……」
項垂れる詩音。あんたとしてはコスプレや胸はアピールなんだろうけど、んなの、一般的じゃない。まあ、辛いだろうがこれも真人間への道。耐えろ。そして受け入れろ。
カウンターに突っ伏す詩音。さあ、立ち上がって真人間に。とか、思ってたけど、『ゆら〜っ』と起き上がった詩音の顔にはそんな愁傷な感じじゃ無かった。なんつーか、『まだ、戦いはこれから』という感じだ。そして、その通りに詩音は自分の正当性を訴えだす。