「ありゃ、オジサンは沙都子のことだから、圭ちゃんと悟史には強化型ビックリ箱でも渡すのかと思ってたよ」
どうも私の意見は不服だったらしく、沙都子は頬を膨らませながら反論してくる。
「失礼ですわね。私、年がら年中、トラップのことを考えているわけではありませんことよ。クリスマスくらいはそういったことは抜きでいきたいですわ」
「……そう。意外だね」
クリスマスくらい。なんかその言葉がえらく引っかかる。クリスマス→愛の告白。まさか? いやいや、落ち着け。クールになれ魅音。相手は沙都子だ。まだ幼い。いくらませようと沙都子はまだ小学生だ。恋愛なんてことは無いだろう。うん。多分、普通に友達へのプレゼントを考えているだけだ。
「ハハハッ。やっぱり男友達に渡すプレゼントは中々難しいもんね〜」
「う〜ん。『男友達』というのは少し違いますわ」
「へ? それはどういう……」
え、まさかここで恐れいていたことが? しかも、この娘は私が口に出来ないことを平然と言ってのける気か?
「にーにーは兄弟ですから。それににーにーには退院祝いを兼ねたプレゼントを渡したいですの」
「あ、そうだよね」
良かった。そりゃそうか。パーティ出席の男は圭ちゃんと悟史の2人。そして悟史は沙都子の兄。確かに友達じゃないわ。
なんて、安心しているところに不意打ちのように沙都子が続ける。
「それに、圭一さんには『特別』ですわ」
「特別!?」
特別ってなんだ!? ま、まさか圭ちゃんを狙ってるとでも言うのか!?ま、まずい。世間の萌えブームを考えると沙都子の方に分がある。これはマズイど、どうする!?
パニクル私。そんな私に静かで澄んだ沙都子の声が聞こえてくる。
「ええ。圭一さんには今年一年、なんだかんだでお世話になりましたわ。にーにーが居ない間、私を守ってくれていましたものですから、2人の分のプレゼントは少し奮発したいんですわ」
「あ……」
儚げな微笑。私はその意味を知っている。そうか。そうだよね。圭ちゃんは何かと沙都子のことを守っていたよね。それなのに私は……。
本当、自分が恥ずかしくなる。恋は盲目っていうけど、こういうのは駄目だな。
「そっか……」
そういうことなら協力してあげなきゃね。
反省する私。今、目の前にいる健気な少女のために一肌脱がなきゃ、女じゃない。
と、感動する私。と、ふと、その健気な少女が手に下げている大きなビニール袋が目に付く。