「そろそろ、時間か……」
時刻は夕方の5時30分。今日のバイトもあと30分だ。なんだかんだで、今日は1日忙しかったと思う。客足はそこそこ。時間帯によって多かったり少なかったりだ。梨花ちゃんが帰った後、またそれを見計らったかのように客が一気に来たけど、それも1時間もしないうちに引いた。その後は客足も途絶えたので、棚の整理と商品の補充。なんかで時間を潰した。そして今に至る。
伯父さんが帰ってくるのは6時頃。それまであと30分。トラブルはゴメンだけど、暇なのもヤダな。
チャリラリ〜♪
私の想いが天に通じたのか。客の来店を知らせるチャイムが鳴り響く。良し良し。これで少しは時間が潰せる。
「いらっしゃい〜」
「あら、魅音さんじゃありませんこと?」
「沙都子?」
今日は知った顔がよく来る日だな。まさか、沙都子が来るとは思わなかった。
「今日はバイトですの?」
「そ、今度のクリスマスパーティーのプレゼントの代金を稼ごうと思ってね」
「あ、そうでしたの」
「沙都子はどうしたの?」
「私もプレゼントを下見に来ましたの」
「へ? もう?」
少し早い気がする。まだクリスマスまでは1ヶ月はあるんだけどな。
「少し気が早くない?」
「私、出来ることは早めにしておく性質ですの」
「あ〜、なるほど」
確かに納得できる。トラップの名手の沙都子。そんな彼女はよく『下準備は出来る時にすぐ』なんて言ってる。それは罠の準備だけではなく、こういった日常生活にも当てはまるらしい。多分、夏休み、冬休みの宿題はすぐにやってしまうタイプだ。
「どうかしました?」
「いや、何でもないよ」
「そ、なら良いですけど。と、丁度良かったですわ。魅音さん、男の子用のプレゼントはどんなのが良いか、一緒に考えてくださらない?」
「へ?」
思わず変な声を出してしまう。いや、まさか沙都子が『プレゼントを一緒に考えて欲しい』なんてしかも『男の子』向けだなんて言うとは思わなかった。男の子向け。それは言い換えれば圭ちゃんと悟史のことだ。私は沙都子のことだから、男用のプレゼントはてっきり、ビックリ箱でも買って、それをさらに改良でもするんだろうと思ってた。
そういえば詩音が沙都子も圭ちゃんのことを好きかもって言ってたっけ。あの時はまさかって、思ったけど……。これは少し探りを入れておくか。