シャレ抜きでタイガー道場行き決定の瞬間。と、その時、聞き覚えのある声が、聞こえた。
「させません!!」
 声の主は私たちの目の前に出ると、その最大の防御方である聖剣の鞘『アヴァロン』をかざす。
 光の鞘がエヌマ・エリシュの暴風を全て防ぐ。
 私と衛宮士郎の目の前に現れた小柄な金髪美少女。それは当然、
「セイバー!!」
 騎士王アルトリア―セイバーだ。
「シロウの帰りが遅いので見に来て見れば……。何のマネです? 英雄王?」
 鞘を下げるとセイバーはギルガメッシュを睨みつける。
「いや、これはその……」
 ここに来てようやくギルガメッシュも正気を取り戻したらしい。まあ、遅いが。震えるその姿はまさに蛇に睨まれた蛙だ。殺されかけたにも関わらず、ギルガメッシュが哀れに見える。
 そんな震える英雄王にも騎士王は遠慮しない。怒りを露に向けている。
「まあ、あなたが理由を言いたくないなら、それもいいでしょう。しかし、しかるべき報いは受けてもらいます!!」
 風の結界から開放され、姿を現す聖剣。
「あ、ちょ……」
 ギルガメッシュもう諦めろ。大丈夫だ。タイガー道場で少し絞られて来い。
「衛宮家の夕食時間を遅らせ、さらにシロウにまで手を上げた罪は万死に値します……」
「ち、違うのだセイバーこれは愛ゆえにというヤツで……」
 ギルガメッシュの必死の訴え。けれど、騎士王は剣を治める気配は無い。それどころ、既に剣は振り上げられている。
「約束された……」
「は、話を……」
 もう、よせ英雄王。時には諦めも肝心だ。
 恐怖に引きつる英雄王。そして振り下ろされる聖剣。
「勝利の剣!!」
 カッ!!
 光が全てを包み込む。決着はついた。光が晴れたその先には黒焦げになって倒れている英雄王が1人。これで問題は解決だ。
 私と衛宮士郎の危機は去った。そして、セイバーは衛宮士郎に駆け寄り、
「さ、不届き者は仕留めました。帰りましょうシロウ」
「ああ。助かったよセイバー」
「今日の晩御飯は何です?」
「今日はセイバーが好きな釜飯と若鶏のから揚げ。それと桜特製のサラダパスタだ」
「ああ、素晴らしい献立だ」
「楽しみに待っててくれ。今日は助けてもらったからがんばって腕を振るうぞ」
 と、2人そろって仲良く夕闇の中を歩いていく。
 公園に残されたのは私とギルガメッシュ。このまま帰っても良いが、それはあまりに英雄王が哀れか。一応声を掛けておこう。
「おい、生きているか? 英雄王?」
「何とか……」
 弱々しく答える英雄王。そんな彼に私が言ってやれることはたった1つだ。
「やっぱりセイバーのことは諦めたが良いと思うぞ」
「うっ、うっ………」
 地面に突っ伏したまま泣き崩れる英雄王。今までが恵まれすぎていたのだ。こうやってお前も大人になっていけばいい。
 そんな英雄王を1人残し、私も帰路についた。

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