柳洞寺山門。4人目のサーバントの居場所がここだ。というより、4人目はこの場所から動くことが出来ない。当然、そのサーバントとは容易に出会うことが出来る。
「なるほど……」
 静かに呟く1人の男、いや、侍こそ4人目のサーバント『アサシン』だ。全サーバント中、2番目に不幸な男と言われている。(1番はバーサーカー)
「まあ、君には迷惑な話だと思うが……」
 本当に迷惑な話だろう。彼はこの山門から動けない。そんな彼に『悩みはあるか?』と聞くのはいかがなものかと思う。
「ふっ……」
 静かに笑みを浮かべるアサシン。どうやら、私の心情を察してくれているらしい。ならば、私もこれ以上、彼の邪魔にならない内にこの場を去るとしよう。
「さて、私はこれで……」
 と、言いつつ、山門の奥、5人目のサーバントがいるであろう啓内に進もうとする私の耳に予想もしなかった言葉が、予想もしなかった声で聞こえてきた。
「本当に……。本当に良く来てくれた……」
「……………はい?」
 その言葉の意味が理解できずに、思わず間抜けな声が出てしまう。そして、そんな混乱している私に間髪入れず、アサシンは言葉を続ける。
「本来ならば客人である君に茶と茶菓子くらいの振る舞いはせねばならぬ所だが、あいにくとそういった持て成しも出来ぬこの身。そこは大目に見て欲しい……」
「……アサシン?」
 気のせいだろうか。彼の頬に零れる雫が見える。
「くっ……。思えば辛い日々であった。しかし、それを解ってくれるものも無く、それどころか聞いてくれるものすらない日々……本当に辛かった……」
 頬に零れる雫どころか、号泣しだした。
「い、いや、そのアサシン?」
「ああ、みなまで言うなアーチャー。解っている。貴殿がいかに悩みを聞いてくれても、それで解決できるとまでは高く望みはしまい。私はただ、聞いてくれるだけで満足だ」
「………」
 何故、こうも予想外の人物にこれほど感謝されるのか。そもそもこの企画に感謝するサーバントがいることに驚きを隠さない。
「本当にこの様な場所で、茶菓子も茶も出せずにすまないと思うが、私の悩みを聞いてくれ……」
  困惑する私とは対照的にアサシンは多少落ち着いたらしい。涙を拭うと静かに語りだした。
「わ、解った……」
 私のこの返答は当然、この後の厄介ごとに繋がっていく。

次のページへ