冬木市商店街。その一角に最近出来たばかりのネットカフェ。そこに現代に美味く適応してるサーバントが1人。
「……と、いうわけなんだが。ライダー?」
「なるほど。話は解りました」
 彼女は『パタン』と、本を閉じると、それをテーブルに静かに置く。そして、
「しかし、アーチャー。本当に『あなた達』は凛に苦労しますね」
 と、よく、『私達』を理解している言葉を投げかけてくる。まあ、それは今は触れて欲しくないことだ。なので、
「それは言わないでくれ……」
 と、これ以上言われる前に断っておく。しかし、このままでは話は『私達と凛』のことになりかねない。ので、話を元に戻すことにする。
「それで、ライダー。君に悩みはあるか?」
「まあ、幾つかは……」
「そうか。あるか」
 まあ、当然、あるだろう。あのセイバーやランサーに悩みがあったぐらいだ。彼女のような苦労人に無いはずは無い。さて、これでようやくまともな相談ができそうだ。と、思ったが彼女はきっぱりとそれを蹴ってくる。
「しかし、私の悩みは人に話して解決するようなものではない。なので、あなたに相談しても意味はありません」
 思い当たる節はある。
「それは容姿の事か?」
「……そうです」
 僅かにその顔を曇らせて答えるライダー。彼女が自分の容姿にコンプレックスを持っているのは私も知っている。
 客観的に見れば彼女は長身の美女だ。それもフランスパリコレ等に出演してもなんら不思議が無いぐらいの超美人だ。が、本人はその容姿を気に入っていない。彼女自身は『小柄で可愛らしい少女』と言うのに憧れている。他人が見れば敬うほどの美しさも、彼女自身には嬉しいものではないらしい。神とやらは望むものに望むものを与えてくれるわけではない。実に捻くれている。
「確かにな。こればかりは私が何を言っても仕方が無いな」
「はい」
 悩みは他社が相談に乗れる類ではない。と、ここで切り上げて次に行くというのが手っ取り早いが、彼女の他の悩みに興味が湧いたのでもう少し粘ることにする。
「先程、幾つかと言ったが、他のものも相談出来るようなものではないのか?」
「そうですね……」
 腕を組み考えるライダー。そして、
「あ」
 と、彼女らしかなぬ声を上げる。
「ん? 何だ?」
「1つありました。相談に向いている悩みが」
「ほう。それはどのような話だ? まさかとは思うが『バイクを買うから、金を貸せ』とか、言うんじゃないだろうな?」
 相談は相談でも金銭面の相談は受け付けられない。
「……違います。あなたは本当に捻くれてますね。『エミヤ』?」
「文句は『衛宮士郎』にでも言ってくれ」
 ジト目で抗議してくるライダー。私はそれを『原因』に言えと答えておく。まあ、それはさて置き、考えてみればサーバントの中でもTOPクラスの常識人の彼女がそんなことを言うことはないか。確かに今のは多少捻くれた答えだった。さて、ではそのお詫びに真面目に話を聞くとするか。

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