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「サーバントの悩みか……」
 正直、これからのことを考えただけで気が重くなる。これが『人間の悩み』ならまだ良い。が、実際は『サーバントの悩み』だ。
「ふう……」
 薄っすらと頭に浮かぶ連中。それだけで溜息が出る。
「ここは……」
 気づけばそこは私が良く知る場所の1つだった。かつての自分の家であり、また、『現在』の自分が生活を送っている場所。
「衛宮邸か」
 懐かしいという感覚は無い。が、気づけばここに足が向いていたということは『それなりの感情』はあるらしい。
「ふっ……」
 自分にそんな感傷めいたことが残っていたことに思わず、苦笑する。しかし、丁度良いと言えば丁度良い。ここにはサーバントが2体もいる。手早く済ませてしまおう。
 一応、呼び鈴を鳴らす。『勝手知ったる人の家』とは流石にいかない。今は私の家ではないのだから。
 ピンポーン。
「はーい」
 聞き覚えのある声が、奥から返ってくる。そして、奥から声の主が出てくる。
「なっ!?」
 出てきたのは金髪碧目の美少女。セイバー。その名が示すとおり、サーバントの1人だ。そして、一番悩みから縁遠いサーバントというのが私の評価だ。
 とは言え、折角ここまで来たのだ。何もせずに帰るわけにもいかない。丁度いいのでさっさと済ませてしまおう。
「セイバーか。丁度いい」
「アーチャー。何故、ここに……」
 身構えるセイバー。まあ、当然の反応か。聖杯戦争が終わったといえ、仲良く話が出来る間柄とは言えない。つまり、放って置けば、いつ掴みかかってくるかわから無い。
 とりあえず、戦う意思が無いことは伝えておく。
「そう身構えるな。別に戦いに来たわけじゃない」
 まあ、そう言っただけで、この生真面目な少女の態度がコロッと変わるわけも無い。なので、
「用件はなんです?」
 と、構えたまま聞いてくる。
 その生真面目さが妙に面白い。ので、少しからかうことにする。
「一応、ここは私の家だ。戻ってきてもおかしくはないだろう?」
 これは正論だ。が、彼女はそれが御気に召さなかったらしい。すぐに否定してきた。
「それは違う。ここの主はシロウだ。エミヤ。あなたではない」
 なるほどそれも、いや、それこそ正論か。と、冗談はここまでのようだ。
「………」
 言葉無く、こちらを見据えるセイバー。構えがより強固なものになった。ヤレヤレ。生真面目な分、どうも凛よりも沸点は低いらしい。
「冗談だ。そうムキになるな」
「……用件を言いなさい。アーチャー」
 限りなく敵意に近い警戒心を向けてくるセイバー。これは手早く、そして手際よく用件を済ませたが良いだろう。
「凛に頼まれてここに来た」
「凛に?」
「ああ……」
 凛の名前を出したとたん、警戒色は薄れ、構えも解かれた。よほど私のマスターは彼女に信頼されているらしい。まあ、それでも彼女の瞳から警戒が完全に解けないのは私が、よほど信頼されていないということなんだろう。
「それで、どんな用件です? いや、誰に用があるのです? あいにく今、ここには私しかいませんよ」
「そうか、それは都合がいい」
 他の面々、特に『衛宮士郎』がいないなら手短に済みそうだ。
「え?」
「今日はお前に用がある。少し、上がらせてもらうぞ」
 と、家に上がろうとする私をセイバーは手で制した。
「待ちなさい」
「なんだ?」
「あなたは凛のサーバントだ。しかし、完全に信用することはできない」
「だから、家には上がらせないと?」
「その通りです。用件があるならここで聞きましょう」
 本当にマスターに忠実なサーバントだ。少しでも『危険』を及ぼす可能性があるものは家に上げないか。
「………」
「………」
 無言でにらみ合う。が、このままでは埒があかない。なので、私は切り札を使うことにする。
「セイバー」
「むっ」
 私がバッグから出した紙袋にセイバーは反応する。
「これはお茶請けに買ってきた『どら焼き』なんだが……」
「上がりなさいアーチャー。凛の使いとしてきた貴方を無下にすることは出来ない」
 先ほどまで緊張感はどこへ行ったのか。セイバーはいとも簡単に道を開けた。
「……邪魔をする」
 これほどまであっさり陥落するサーバントというのも珍しいが、まあ、よしとする。

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