(……ここで最後ね)

 つ、疲れた。ここってこんなに広かったのね。前に来たときはウサギの力で錯覚させられたけど、普通の状態でも十分にここは広い。そして、その分住人も多い。いつも顔を合わせるのは優曇華と因幡。あとはたまに薬を分けて貰う時に永琳に会うぐらい。他の住人とは挨拶を交わす程度。だから、多いだろうぐらいには思っていても、実際ここまでとは思いもしなかったわ。

(でも、ここで最後よ)

 そう。ここで最後。最後よ。だからやり遂げなきゃ。やり遂げ……。

(……入りたくないわ)

 扉の奥からかなり嫌な予感がする。本当に嫌な予感。他の部屋とは違う空気。それこそ気品を漂わせるその場所。そこは間違いなくこの永遠亭の主――蓬莱山輝夜の部屋。だからこそ入りたくない。

(私はあ〜ゆうのとは相性が良くないのよね……)

 あ〜ゆうの。マイペースなの。そういうのには基本的に巻き込まれて、ろくでもない目に合う。具体例は上げないでおくけど。

(でも、いつまでもここに立ってるわけにもいかないし……仕方がないか)

 私は意を決して部屋へ入る。

少女ピッキング中

(……何よこれ?)

 扉を開けた先のその部屋。そこは確かに主、蓬莱山輝夜の部屋だった。だったけど、

(これ、人が住む環境?)

 なんというか酷い。そうとしか言えない。床に散らばる雑誌の山。(しかも外の世界のものが多い。香霖堂で買いあさったんだろう)そして、転がる食べ物、飲み物の容器。おそらくは万年床の布団。その他、散らばるゴミ。そして、その中央、パソコンとかいう外の世界の式紙を備え付けたコタツで潰れている輝夜。

(これが仮にも姫とか呼ばれる者? こんなのが?)

 だらしないにも程がある。

(ゴミは捨てなさいよ。本は本棚にしまいなさいよ。布団は干しなさいよ。寝る時は布団で寝なさいよ……)

 いけない。色々と言いたくなってきた。でも駄目。今日はそんなことをしに来たんじゃない。早くプレゼントを置いて帰ろう。

(見つかったら、部屋の掃除をさせられそうだし)

 プレゼントをコタツの上に置く。輝夜は気づかない。

 よし、終了。さて、帰ろう。すぐ帰ろう。厄介ごとに巻き込まれる前に。

翌朝

 輝夜が目を覚ましたのは昼過ぎ。そして、そんな彼女が最初にやったことは、

「いけない。寝落ちしちゃった」

 そう言いつつ、キーボードを叩くことだった。

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